第15章 おとぎのくにの 7
「サトさま?」
「…さっき野いちごを食べ過ぎちゃったみたい。もうお腹いっぱいになっちゃった」
完全に手が止まってしまった私を見てカズが心配そうな顔をしたから、へらりと笑って誤魔化して。
「ごめんね、マサキ。こんなに食べられる?」
カズ同様心配そうな顔でこちらを見てたマサキにも笑顔を向ける。
私につられたようにカズの手も止まってしまったから、まだまだたくさん残っている料理はマサキに託すしかない。
「食べていいなら食べられますけど…本当にもう食べないんですか?」
マサキはちょっと困ったように確認してくる。
「本当にお腹がいっぱいなの」
「カズは?」
「私ももう十分いただきました」
それは絶対にうそだけど、先に食べることをやめてしまった私には何も言えない。
「…じゃあ、遠慮なくいただきます」
マサキは少し迷っていたみたいだったけど、素直に食べることにしたらしい。
再び手と口を動かし出した。
いくらマサキがたくさん食べるとはいえ、さすがに多すぎるかなと思ったけど。
それに関しては全然心配いらなかった。
ものすごい速さで食べ物が消えていく。
今までも気持ちのいい食べっぷりだと思っていたけど、どうやら一応私たちのペースに合わせてくれていたらしい。
まるで魔法のようで、ついじっと見てしまっていたけれど。
こんなに見られていたら食べにくいかなと、マサキから視線を逸らしてぼんやりと湖を眺めることにした。
綺麗な景色はどれだけ見ても見飽きることがない。
何も考えず心を無にして、胸の痛みから意識を逸らした。