第20章 卒業式
翔ちゃんは赤い顔で口元を手で押さえて何とも言えない表情をしてて。
最初は照れてるんだと思ってた。
でもじっと見てたら何か違う気がしてきて。
だってあんまり嬉しそうじゃないって言うか…
どちらかと言うと困ってるような悩んでるような、そういう微妙な顔に見える。
俺なんか変なこと言ったかな?
…………はっ!!
もしかして乙女思考すぎてキモかったとか?
確かに王子さまとか少女漫画のヒロインとか、男のくせに夢見る夢子さんかよって感じだよね。
そりゃキモいって思うか…
最後だから全部知ってほしいとか、俺の自己満足でしかなかったんだ。
「ごめんね…」
「………え?は?何が?」
申し訳なくなって頭を下げたら、翔ちゃんはキョトンとした。
「俺がキモイこと言ったから、翔ちゃん引いてるんでしょ?」
言葉にしたらグサッときた。
自分で言ったことに自分で傷ついてしまう。
「はぁっ!?」
でもしょんぼりする俺に、翔ちゃんは素っ頓狂な大声をあげて。
「引いてない!!引くわけないよ!!あんな可愛い告白聞けてめちゃくちゃ嬉しいよ!!」
全力で否定してくれたけど。
「だって…なんか微妙な顔してたし…」
翔ちゃんは優しいから、引いたって言えないだけでしょ?
さっきの顔、どう見たって喜んでるようには見えなかったもん。
翔ちゃんの言うことを信じられなくて。
いじいじと拗ねてたら、翔ちゃんはオロオロしだした。
「違うんだ…カズの思い出がすごくキラキラしてて…俺の記憶との違いになんて言ったらいいか分からなかったんだよ…」
………ん?
「どういうこと?」
翔ちゃんの記憶とのちがい?
翔ちゃんから見たあの日の出来事は、俺の思い出と何かちがうの?