第20章 卒業式
「1人…じゃないよね?潤くんは?」
「潤も一緒だよ」
ちょっと待ってねって言われて。
「もしもし、ニノ?」
次の瞬間にはスマホから潤くんの声が聞こえた。
たぶん真横にいたんだと思う。
「潤くん」
「大丈夫そうだな?」
「うん、もう大丈夫!」
潤くんは智よりずっと落ち着いてて。
一応念のために確認したって感じ。
でもその声音から、すごく心配してくれてたことは伝わってくる。
「心配かけてごめんね」
「いや、ニノが謝ることじゃないだろ。災難だったな」
「うん…ありがと、潤くん」
絶対心配かけたのに、気にするなって言って俺のこと労ってくれる潤くんもすごく優しい。
「帰ったら美味いもん食って、ゆっくり休んで。今日は早く寝ろよ」
「はーい、お母さん」
「お母さんじゃねぇっ!!」
本人は否定するけど、やっぱり言ってることがお母さんみたいだと思うんだよね。
潤くんはプリプリしたまま、智にスマホを返したらしい。
智がクスクス笑う声が聞こえてくる。
「安心したから、俺たちはもう帰るね」
智ももうすっかり穏やかな声に戻ってて。
「本当に本当にありがとね!」
「どういたしまして」
「智、大好き♡」
「んふふ、俺も。大好きだよ」
きっといつものふにゃっとした笑顔を浮かべているんだろうなって想像できる。
「春休みはいっぱい遊ぼうね」
「うん」
「ばいばい、またね」
「うん、またね」
またすぐに会う約束をして電話を切った。
智と話してたら、いつの間にか気持ちがすごく穏やかになってて。
智を安心させてあげなきゃって思ってたのに、結局俺の方が癒されてる。
智の癒しパワーは電話でも効果抜群だ。