【B-PROJECT】(完結)あなたの瞳に永遠を誓います
第64章 理想と現実
「疲れた。仕事より疲れたよ」
「お疲れさまです。でも、可愛い人でしたね」
そっと彼の頭を撫でた。
髪はサラサラだし、いい香りがする。
竜持くんは遠くから見ても可愛いけど、近くから見たら更に可愛いから本当にすごい。
「あれが彼女ならカズの好みを疑うよ」
"なまえのことを知ってるだけにね"小声で囁かれた言葉に吹き出した。
「竜持くんは褒め上手ですよね?」
「そんなことないけど?これ、返してあげる」
小さな声でそう言った彼を見ると、柔らかなものが唇に触れる。
「なまえにちゃんと返したよ。まぁ僕も得しちゃったけど」
思い出すのはあのシーン。
確実に私よりお似合いだ......!
竜持くんが増長さんとキス?
これって間接キスだよね!
気づいてすぐに顔が熱くなった。
『倫毘沙も竜持も彼女をからかってるの?』
書かれた文字と増長さんを見合わせる。
もう三度目ともなれば彼も呆れているんだろうな。
「そんなわけないでしょ?なまえは婚約解消したから、僕達にもチャンスが巡ってきたかも」
「竜持くん!」
慌てて彼を制止した。
「僕が冗談でそういうことする人間に見えるとしたら、カズの目は節穴だね」
やれやれという風に笑った彼に北門さんが続ける。
「俺もなまえのことが大好きなんだ」
二人の発言に混乱していると、北門さんが増長さんに問いかけた。
「それより、彼女って......まだ交流があったんだね?」
二人の話によれば彼女も幼い頃からアイドルをしていて、増長さんと北門さんが共演していた『天才ブランチ♪』時代によく共演をしていたようだ。
つまり、古くからの知り合い。
過去に告白してきたことがあって、今日は友人のお見舞いに来ている時に彼と遭遇。
あれよあれよという間に病室で話をすることになり、気付けばあの状況だったみたい。
彼は私達の気配がしたから大きな音を立てたそうだけど、気配が無くなったから力づくで形勢を逆転したそうだけど。
「積極的な女性ですね......」
世間は広いな。
気になるのは、増長さんの北門さんに対するよそよそしさ。
その様子に、記憶がないのだと改めて実感する。
「それじゃ、またね」
「カズ、おやすみ」
「おやすみなさい......」
彼に頭を下げて病室を後にした。