【B-PROJECT】(完結)あなたの瞳に永遠を誓います
第84章 訪れた変化
あの日からみょうじさんに迫るのはやめた。
「まっすー、まだ解決してないの?」
「あのこと?」
「うん。気になるなら聞けばいいのに」
「気になってないと言えば嘘になるけど......結婚を反故にされたわけじゃないし......」
でもその考えはすぐに揺らぐことになる。
「結婚式......もうすぐですね」
仕事終わりに家まで送ればみょうじさんは浮かない表情だ。
「間近に迫って不安になっちゃった?」
立ち止まる彼女の顔を覗き込むと不安げで急かし過ぎたのかな。
「本当は......もう少し待って欲しかった?」
「え?」
「俺の記憶が戻ったから予定より準備が早くできたもんね。でもみょうじさんの誕生日までは......ちゃんと待つよ」
「はい......」
元気のないその様子が気になる。
見ない素振りが本当に正解なのか?
最悪のケースを考えたら他に好きな人ができたとか。
それがあの男の人。
確かに頻繁に連絡は取ってそうだ。
一緒に居る時も携帯をつつく姿が増えた。
でもちゃんと信じたいから。
きっとこれが最後の試練で俺は試されてると思う。
もし最悪のケースが事実だとしたら、
「好きだよ......俺にはみょうじさんだけだから」
この台詞は彼女を傷つけることは分かってる。
分かってて......選んでる。
付き合う前から迫ったし『好き』って伝えた自分を正当化して身体から手に入れようとしたかもしれない。
『人はずるくないと本当に欲しい物は手に入らない』と思うから。
こんなに誰かを『独り占めしたい』と思ったのは初めてなんだ。
傷つくのは怖いし失う時が一番怖い......。
母さんのことがあってからずっとそうだった。
でもみょうじさんだけは違う。
傷つくことがあっても嫌われるのが怖くても......欲しい。
俺は彼女に手を伸ばすことをやめない。
「私も......好きです」
でも
そう言った彼女と
目が合うことはなかったーー。