第10章 尸魂界突入編
何だか非常に揉めている声が聞こえて来るが、無視して治療を続けていると、先程部屋の中に入っていった男と知り合いと思われる男たちが数名現れ、ついでに一護とその男が転がるようにして外に出てくる。
「うおおおおお!!!」
「うわっ。な…何…?敵…?」
「く…黒崎!」
「黒崎くん!!」
どうやら一護は男にタックルされて家の外へ出されたらしい。井上と石田が慌てて様子を見に顔を出す。すると、到着した新しい男たちが石田達の前に立ちはだかった。
「おーーっと。」
「アニキの邪魔すんなよ。」
「アニキの戦いに手出ししようってんならオレたちが相手になるぜ。」
「…!あのガンジュって奴の手下か…!」
「…すごい…ぜ…全員…」
猪に乗ってる…!
これが流魂街では当たり前なのだろうか?もしかして、車の代わり…?意味の理解出来ない状況に井上と石田は眉を顰め、1番状況を掴めないゆうりがこっそり井上に耳打ちする。
「ねぇ、何があったの…?アレは誰…?」
「ええっと…あたしもよく分からないんだけど…何だか死神を見たら急に黒崎くんと喧嘩になっちゃって……。」
「喧嘩…?」
「さァッ!とっとと出ていきやがれ!俺様の目の黒い内はこの西流魂街に死神なんか一歩たりとも入れやしね……えぺ!!!」
「ああッ!!アニキ!!!」
「…なるほどね…。」
何やら憤る男の顔面に一護の蹴りがヒットした。
なるほど、どうやら彼は死神が嫌いらしい。全ての死神がそうという訳では無いが、死神は流魂街の住民に対して偉そうな態度を取ったり見下したりする者は少なく無い。故に、嫌われる事も稀とは言えない。それを知っているからこそ、何故こんな事になっているのか特に疑問には思わず納得した。
兎にも角にも、治療している隣で本格的に戦闘を始められてはたまったものでは無い。ゆうりは殆ど腕がくっ付いているのを確認してから兕丹坊の身体を背負い、彼等の元から離れた。
「…今染谷さん、あの巨体を軽々と持ち上げなかったか…?」
「…あ、あたしも見てた……。ゆうりちゃんって凄く力持ちなんだね…。」
自分の何倍も大きい身体を難なく持ち上げる女子…!違う意味で戦慄を覚えた井上達などつゆ知らず、ゆうりは再び彼の治療を再開させた。