第7章 死神編【後編】
有無を言わせぬ形相に渋々頷く。本当にもう大丈夫なのに。それにいつまでも四番隊のベッドを借りるわけにもいかない。
「じゃあ、部屋で休むよ。ここ空けないといけないだろうし。」
「…この荷物はどうするつもりだ?」
「…頑張って運ぶしかないよね……。」
とても一往復では運び切れない量に思わず頬が引き攣った。それでもこの場所に置いておく事も出来ない。白哉は徐に見舞いの品々に手を伸ばし幾つか持った。突然の行動にゆうりは慌てて両手を振る。
「えっ?い、いいよ!自分で運ぶから!」
「1度で運び切るのは無理だろう。」
「そうだけど…。」
「貴様は早く卯ノ花隊長に声を掛けて来い。」
「う…何から何までありがとう…。」
引き留めようにも彼がゆうりの言葉を聞くことは無かった。諦めて彼女は病室を後にし、卯ノ花の執務室へ向かう。少し早い時間に起きていたと思ったが、彼女は既に起きており執務机へと着いている。
「おはようございます卯ノ花隊長、昨日はお世話になりました。熱も下がったので自室にて休ませて頂きます。」
「おはようございますゆうり。調子は悪くなさそうですね。ですが貴方はまだ病み上がりです。この薬を食後に必ず飲んでください。」
「…粉薬…。」
「飲んでくださいね。」
「うう…飲みます、約束します…。」
あまり粉薬は得意では無かったが、卯ノ花の威圧的な笑みに泣く泣く首を縦に振った。小袋に分けられた粉薬を幾つか受け取り再び病室に戻る。抱え切れるだけの見舞いの品を持って白哉と共に自室へと向かう。
「おはようございます、朽木隊長!染谷さん!」
「おはようございます!!」
「あぁ。」
「おはよう、皆久しぶり。昨日はありがとう。」
すれ違う四番隊隊士と簡単な挨拶を交わしながら隊舎を出た。外は晴れており、もうほとんど桜は散り新緑が芽吹いている。季節が移ろい始めていくのを目と肌で感じた。
「ねぇ、少しだけ書類持ち帰って」
「ならぬ。」
「……だよね。」
家でじっとしているのはどうも性に合わないのだが…。こっそり鍛錬しに行っても多分、バレるだろう。そしてバレた後のことを考えると恐ろしくてそんな気にはなれない。
どう時間を潰そうか考えながら歩いていると、前方から見知った男が歩いて来た。