第26章 翡翠の誘惑
レイの言葉に自身の下半身を見てみれば、白い脚をさらけ出してしまっている。
「やっ…!」
慌てて裾を押さえるマヤの顔は真っ赤だ。
「そんなじっくりとは見てねぇから安心しろ」
「少しは見たんですよね…?」
「……まぁな」
「今すぐ忘れてください!」
「ハッ、それはできねぇな。他言はしねぇからそれで勘弁しろ」
レイはやっとマヤと二人きりになれたと上機嫌だ。
ペトラの様子を見に “ファビュラス” に顔を出せば、マヤはいなかった。オルオに訊けば、落とした耳飾りを捜しにいったと言う。
広間にも、広間から “ファビュラス” までの廊下にもマヤの姿はなかった。
……奥に行ったのか?
理由はわからないが、どうやら廊下を奥に進んだらしいマヤを追って来てみれば。
薔薇園を見渡せるテラス… 通称 “薔薇テラス” にいるところを見つけた… のはいいが、手すりを乗り越えようとしているらしく、今まさにスカートから白い脚を剥き出しにしようとしている。
……おいおい、見つけたのがオレだからいいものの危ねぇじゃないか。
本心を言えば、男の欲望に従ってさらに裾がまくれ上がって白い脚のもっときわどいところも、そしてあわよくば… 尻だって見たい。
だが理性がそれを打ち消した。
マヤに気づかせるために、わざと声をかける。
「……サービス精神旺盛だな」
こうして尻を見ることは叶わなかったが、そんなよこしまな欲望よりも今こうしてマヤと、誰にも邪魔されずにテラスで二人。
その事実がレイの心を揺り動かす。
……月明かりのテラスで二人きりとは、まるでグロブナー家のときのようじゃねぇか。
レイがマヤとテラスに二人でいるという状況に感激していると、マヤの申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
「レイさん…、謝らないといけないことがあります。私、耳飾りを片方、落としてしまったんです。本当にごめんなさい…!」