第12章 〜それぞれの覚悟〜
『ハハハ、出た。栞の百面相!』
そう言って、秀吉は笑った。
『とにかく、帰っても身体に
気をつけて、達者で暮らせよ』
そう言って、頭をポンポンと
撫でた。
『はい!ありがとうございます
秀吉さんもお元気で!!』
そう言って満面の笑みを向けた。
『じゃ、私、城内の方々にも挨拶
してきますね!』と行ってしまった。
栞を見送る秀吉は、決して
手に入れることは許されない
憧れを見つめる眼差しで
栞の後ろ姿を見つめていた。
(行ってしまうのか・・・)
栞は、お世話になった城内の人達
できる限りに、お世話になりましたと
挨拶して回った。
国の両親が、具合が悪くなり看病に
行くので、いつ戻れるか分からないから
と理由を添えて。
挨拶が終わると、城の沢山の人達に
見送られ、栞は、泣きながら
信長と共に戦さ場へと
出立したのだった。
栞を胸に抱き、馬を走らせる信長は
栞を手放したくない、葛藤と
戦っていた。通路が開き
栞が消えてしまう事を想像すると
胸が騒ついて仕方かった。
(全く、わしもとんだ腑抜けに
なってしまったものよの。
栞、貴様のせいだぞ)そう思い
栞をちらっと見ると、栞は
信長の胸で、温もりを確かめる
ように、寄り添い目を閉じていた。
とても幸せそうに微かに
笑みを浮かべていた。
(ふっ、仕方あるまい。わしを
骨抜きにする奴に惚れてしもうた
のじゃからの)とニヤリと笑みを、浮かべた。