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《イケメン戦国》初恋〜運命の赤い糸〜

第10章 〜ありふれた日々〜


色々とみて歩いていたが
一件の小物屋で桜奈の足が
止まった。
薄い黄色と薄い桃色の小花が
数個まとめられ、外側には
葉の形に模られた翡翠が二枚。
そこから同じ小花を縦に並べた飾りが
二連ついていて、動くたび揺れる簪。

『可愛い』と手に持って簪を
眺めたが、ふと、視線は
鼈甲に小さな紅葉かはらはらと
散っているような細工がしてあり
紅葉の部分だけ鮮やかな朱色に
染まったつげ櫛も目に止まった。

両方を手に持ち、何度も見比べ
どちらにしようか真剣に
迷う桜奈の横顔を
愛おしそうに眺めていた家康
だったが、簪の方を桜奈の
手から取ると桜奈の髪に
飾った。

『今日の着物には、こっちが似合うよ』と
言うと、家康様が、そう言って下さる
ならと、お勘定に向かおうとする
桜奈を引き止め
『桜奈に贈り物がしたいから
俺が買う』と言って簪の代金を払うと

『これは、看病とお守りのお礼』言って
また、髪に飾ってくれた。

『ありがとうございます。大事にしますね』と
小花より可愛いい笑顔で喜ぶ桜奈。

簪を買う時に桜奈に内緒で
つげ櫛も一緒に購入したが、それは
また別の時に送ろうと懐にしまって
店を出た。

二連の小花が歩くたび、可愛く揺れる。
桜奈は、何度も簪にそっと
触れ、そこにあることを確認しては
嬉しそうな笑みを浮かべた。

途中で団子屋で休憩し
家康は、きな粉餅を桜奈は
お団子を頼み、二人で美味しい
と言いながら食べた。

楽しい時間は、あっと言う間に
過ぎてしまい、気がつけば
夕日で辺りは黄昏色に
染まっていた。

『そろそろ、帰ろうか』
『はい、そう致しましょう』
二人は手を繋ぎながら家路に向かう。

二人に会話はなかった。
言葉などいらなかった。
隣に桜奈がいる
隣に家康様がいる
こうして、手を繋ぎ共に歩いている。

それだけで、言葉にならない
幸せに包まれる。

引き裂かれた運命に
一度は絶望し、心が粉々になるほど
苦しんだ二人だからこそ
共に過ごせる時間が
何倍も愛おしく感じられた。

側にいられる事の幸せを
噛み締め、時折、目を見合わせ
微笑み合いながら
二人は、同じことを願う。

(この先も、ずっと二人で共に
いられますように)と。





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