第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
千代が周りの期待にしっかりと答えてくれ、元気な男の子を産んでくれた。
『竹千代』
私の嫡子という事で、そう名付けられた。
これで、ひと安心だ。
私が側室を千代以外に迎えなかったのは、何人も男子が生まれてくることを懸念したためでもある。
雅紀は、もしも生まれてきても身体が弱い子だったら…などと心配したが、兄弟で争うようなことは……それは嫌だったのだ。
私自身が、そうやって弟の潤と仲良うすることができなかった。
いつも遠くから私のことを見ていた潤…今思えば、私の方から声をかけてやれば良かったのだ。
周りの大人たちに踊らされ、私はたった一人の血を分けた弟の潤と近づけなかった。
私が将軍になる少し前、潤は出家して寺に入った。
謀反を企てないためにと……
潤は黙ってその定めに従った。
それが今も、私の心に大きな傷となって残っているのだ。
潤はきっと、謀反などする気はなかっただろう。
私にもう少し勇気があったら、潤と兄弟として、仲良く助け合えたかもしれないのに……
「上様。いかがされました?」
「さと……」
何も言わず、さとの肩に凭れかかると、さとは頭を優しく撫でてくれた。
「翔さま、なんだか悲しそうでした…」
「悲しそう…か…」
「ええ。無事に御嫡男が産まれたというのに…浮かないお顔をなさって…」
「さと…」
「私に出来ることがあれば、なんなりと…」
さとの隣は温かい…
温かくて、心地よい…
将軍とは、なんとも孤独なものだ…
「さとが、おりまする……」
「……さと」
さとは、私の心の中までも、包み込んでくれるようだ。
「さと…私を…包んでくれ…」
「………はい。翔さま」
さとは立ち上がると、私に見せつけるように着物を一枚ずつ脱いでいき、最後の紐をほどくと、
「…さとに、させてくださいまし…」
と、笑みを浮かべた。