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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第8章 原作編《林間合宿》


轟SIDE


咄嗟に飛び出して伸ばした手が2人の入ったモノの一つを掴んだと思った。

「哀しいなあ。轟焦凍」

しかしそれは目の前にいた顔中ツギハギの敵に先を越されてしまい、空を切っただけ。
直後、別の声が後ろから聞こえてくる。

「遅くなった!」
「これで全員だな」

その声の方へと視線を向けるとここにいるはずのない人物が担がれていた。

「紫沫…?」
「ちょっと、借りるね」
「…は?」

俺の声に反応したソイツはそう言い残しすぐにモヤの中へと消えてしまう。

「確認だ"解除"しろ」
「っだよ、今のレーザー…俺のショウが台無しだ!」

そしてそのビー玉のようなモノから現れたのは爆豪だった。

「問題なし」
「かっちゃん!」
「来んな。デク」

爆豪の姿がモヤに引きずり込まれていく。

「あ…——っ…ああ゛!!!」

すぐ近くで緑谷の叫び声が聞こえる。
俺は目の前で見た光景に脳が追いつかず反応が遅れた。

「っフザケんなよ!!!」

あれは紛れもなく紫沫の姿だった。
狙われていたのは爆豪で、紫沫は先生のいる施設だから安全だと思っていたのに。
あまりにあっさりと俺の目の前から姿を消してしまった。
手を伸ばすことすら叶わぬまま。

「あれは…雪水…?」

常闇を救け出すことに成功した障子も見ていたらしい。
その言葉に俺の見間違いでないことを改めて認識して、不甲斐なさと怒りの入り混じった感情が俺を更に襲った。

「クソッ!!!!」

俺達は敵に完全敗北したのだ。
ブラドキング先生が通報していたらしく、敵が去った15分後に救急や消防が到着。
施設へと戻り紫沫の姿を探すも案の定見つけることはできず、共にいたであろうクラスの奴らが騒いでいるのが目に入る。

「オイ、紫沫はどうした?」
「っ轟!」
「雪水の姿が見当たらないんだよ!」
「…そうか」

わかり切っていたことなのに往生際が悪いと思う。
生徒41名の内、敵のガスによって意識不明の重体15名、重・軽傷者11名、無傷で済んだのは13名……行方不明2名。
目の前で連れ去られて、それを食い止められなかったのは自分自身だ。
あの時手を伸ばしていれば…そう思わずにはいられなかった。


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