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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第8章 原作編《林間合宿》


紫沫SIDE


肉じゃがも後は煮込むだけとなった。
とは言えコンロのように火加減が一定ではない為、竃から離れることは出来ない。
その場にしゃがんでぼんやりと竃の火を眺めながら、半分無意識で喋り出していた。

「さっきの話なんだけど…」
「さっき?」
「緑谷君に聞かれてた洸汰君のこと」
「ああ、その話か」
「私と同じだったんだよ」
「どういう事だ?」
「両親がね、もういないんだって」
「…そうだったのか」
「だから少し気になってたんだけど、焦凍君の言葉聞いて私の出る幕じゃないって思った」
「そうか」
「うん…」

自分でも何でこんな話をしたのかあまりわかっていなくて、とりとめのないことしか言えない。
何を思ったのか、隣に立って鍋の様子を見ていた焦凍君は私の頭の上に手を乗せあやすようにぽんぽんとされた。

「置いて行かれたら、寂しいよね…」

両親というのは子供にとって何にも代え難いとても大きな存在で、あんな小さい子なら尚更そうだと思う。

「両親の代わりにはなれねぇが、せめてその寂しさを埋めることは出来るんじゃねえか?」
「そうだね…誰だって独りじゃない。私に焦凍君がいてくれるみたいに」

焦凍君がいてくれたから、あの事件を本当の意味で受け止める事が出来たんだと思う。
だから私は今こうやってここで頑張る事ができている。
私にとって両親と同じように、何にも代え難いかけがえのない存在。

「傍にいてくれて、ありがとう」

焦凍君を見上げて笑みを浮かべた。
感謝の気持ちを伝えるのには笑顔が一番だと思うから。
頭の上にあった手が撫でるようにして私の髪の毛を一房掬い上げた。

「紫沫…」

立ったままの焦凍君が覆い被さるようにして近づいてきて、
手の中にある髪の毛に口付けを落とされる。

「何があっても離れねぇ」
「…うん」
「ずっと傍にいる」

そう告げて体制を戻すと、再び目線は鍋の方へ。

「お、そろそろいいんじゃねえか?」

気付けば鍋からぐつぐつと煮立った音が聞こえている。

「一回味見してみる」

腰を上げて味見用のスプーンで確認する。

「俺も味見してみてぇ」
「はい」
「ん…」

深く考える事なく、手に持っていたスプーンを焦凍君の口に運んでいた。


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