第10章 fallita【ブチャラティ】
そして今、情けなくもこうして平和な病院のベッドの上で、私はミスタに掴みかかっているという訳だ。
「おい、落ち着けよ!…アイツなら、あの後オレが捕らえたぜ。両手両脚に弾丸ブチ込んでやったら、さすがに抵抗する気も無くしたらしい」
とりあえず生きた状態で上に引き渡しておいた、と彼は続けた。
更にその後は私を病院に担ぎ込み、一晩中側に付き添っていたと。
「そう……だったの。ごめんなさい…ありがとう」
「ま、無事に目覚めてよかったぜ。撃たれたのが脇腹でラッキーだったってとこか」
ミスタはそう言って微笑んだが、私はとても笑い返す事なんてできなかった。
私の油断と慢心から、ミスタに迷惑をかけてしまった。
確実に倒せた筈の格下相手にこんな負傷をして。
もし彼があの場に居なかったら、私のせいで、任務は失敗していた。
私の馬鹿な振る舞いで、チームの名前に……ブチャラティの名誉に、傷をつけてしまった。
私が、私が、私が。
取り返しのつかない失態が、自己嫌悪が、頭の中をぐるぐる回って吐き気がする。
私はブチャラティのチームに入ってから今まで、任務に対して細心の注意を払ってきた。どんな小さなミスだろうと決して犯さぬよう、徹底してきた。
彼の役に立ちたかったから。彼に信頼してもらいたかったから。
それに、何より───こんな私でも…こんな何も持っていない人間の私でも、彼の側に居てもいいんだって思いたかったから。
そんな私の必死の働きを、ブチャラティは認めてくれた。
本当に本当に嬉しかった。
これからもずっと、貴方の為なら何だってできる。
私の居場所は、ここにしかないのだ。
そう、思っていたのに。
───役に立たないのなら、このチームに私が居る意味なんて、無い。