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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第9章 ヘイアン国



 離せと言い聞かせる間もなく、歌姫の足がローを踏み潰した。ブリキの歌姫のスカートの中にあったのは、硬い金属のフレームで出来た4本の足と、蚯蚓に似た醜悪な第二の頭だった。

「アアアアア! アAhあァああああA!」

 腕が落とされた痛みを感じているかのように、歌姫は飛び上がって繰り返しローを叩き潰した。
 ボキボキと骨が折れ、内臓が潰れる音が響く――。
 リトイが太刀を抜いて斬りかかるものの、硬い金属のフレームはたやすくリトイの刀を跳ね返してへし折った。彼女はそのまま歌姫の足に蹴り飛ばされ、地面を転がり動かなくなる。

「――やめろ!!」

 ローにトドメを差そうとした歌姫の前に飛び出してきたのは、打ち合わせ場所で爆薬を仕掛けて待機していたはずのウニだった。両手を広げて船長をかばい、殺戮人形を睨みつける。
 歌姫は構わずウニも叩き潰そうとした。

「僕は人形師だ」

 ぴたりと人形たちの動きが止まる。人形師は殺すなと厳命されているんだろう。ウニが睨みつけると、人質をとった小型の人形たちがジリジリと下がる。

「……やめろ、ウニ」

 混濁した意識を必死につなぎとめながら、ローはクルーを止めようとした。だがウニに引く気配はない。マリオンだけでなく、ウニにも見張りをつけるべきだったとローは自分の判断ミスを悟った。

「忌々しい自律人形たちの影に隠れていたガキが、ずいぶんと成長したもんだな」

 人形たちが恭しく下がる。現れたのは歪んだ笑みを浮かべた子供だった。
 ブラッドリーは10年以上前から手配されている海賊だ。本人の訳がなく、奴の分身たる蝋人形だった。

(また子供……そうか、小さい方が人形に混ぜる自分の血が少なくて済むからか)

 なんとか動くのは頭だけだった。刀を握ろうとするだけで全身に激痛が走る。
 蝋人形が鬼哭を拾い上げてローの腕を地面に刺し貫いた。

「ぐ……っ!!」
「妙な真似はするな、住人を爆破させるぞ。俺はこの国の人間の命に興味はない。労働力なら人形で事足りる。この国はいずれ俺の王国――人形の国になる。そのために必要なのは人形師だけだ」

 だが、と蝋人形が歪んだ笑みを浮かべてローの髪を掴み上げる。

「お前は例外だ」
「船長に触るな!!」

 ウニが爆弾を持ち出し、導火線に火をつけた。

「人形師が欲しんだろ。細工をする手が吹き飛ぶぞ」
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