第1章 1部
自分で言い出した事ながら、カミナと辿る大グレン団の軌跡に私の心がゆっくりと癒されていくのが分かった。
ガンメンの中で背中に感じるカミナの体温。
眼下に見下ろす荒れた地面に落ちるガンメンの影。
ここはどこかと耳元で尋ねるカミナの声。
楽しそうに全開の笑顔で海水を跳ね上げるカミナ。
絶望の中で一度通り過ぎたこの道に、まさかこんな二度目があるとは思っていなかった。
海で獲れた見たことも無い魚を焼いて昼食を済ませ、再びガンメンで進む。
背中のカミナが何故か不機嫌そうに頭を掻いていた。
「…なんか体がべたべたすんな」
「あ、そうか。海水だから乾いたらべたつくんだ。どっかで洗わないと」
海に来たのは一度きりだから忘れていた。海水の塩分で身体も痒い。
動く度に体から塩が落ちる事に二人で苦笑いをして、水源を探す事にした。
もう少しでダイガンザンと戦った場所、つまりカミナの墓標という所で川を見つけた。
背の高い葦に囲まれた川辺でお互い身体を流す。カミナが水をかぶる音を確認してから、別の場所で水を浴びた。覗かれたらたまったものじゃない。
塩だらけの服を洗い、固く絞ってまた着た。幸い天気も良いし着ているうちに乾くだろうと適当な事を考えガンメンに戻る。
同じく先にガンメンに戻って来ていたカミナが、顔を顰めて私を見た。
「…なんで服着てんだ」
「いやそりゃ…着替えなんて持って来て無いし」
「そこはお約束で裸とかだろうが! どっきりハプニングはどうした!? こうなったら覗くからもう一回入って来-い!」
「やだよ! お約束って何よ! てかやっぱり覗く気だったのかー!?」
ぎゃいぎゃいと下らない言い争いをしていると空が黒くなってきた。大きな雲が空を覆い始める。
「…!? これって降るんじゃない!?」
諍いを一旦収め、慌てて操縦席に飛び込むと同時に空から大粒の雨が落ちて来た。
操縦席からの視界でどしゃぶりの外の世界が見えた。さっきまでのいい天気はどこへやら。