第2章 ハンドクリームと彼と
『お前、ハンドクリーム変えた?』
そう聞かれたのは、お風呂から上がってハンドクリームを塗っていた時。
私が使っているハンドクリームなんて絶対知らないと思ってた。オッパは私がそう考えていることも知らずに、私の手を取って自分の唇に近づけていく。
そしてちゅ、という音と共に私の手に彼の柔らかい唇の感触が伝わってくる。
「お、オッパ?」
いきなり手にキスなんて、オッパはどうしたのだろう。
1人で戸惑っていると、オッパは私の頬をムギュっと掴んで言う。
『お前さ、俺がお前の使ってるハンドクリームの匂いなんて気にしてないと思ってただろ?』
「う、ん」
『本当はお前の使ってるものとか全部把握しておきたいくらいなんだよ。そのくらいお前に溺れてる』
いつもなら言われない言葉に戸惑っていると、
顎をぐいっと持ち上げられて荒く唇を塞がれた。
「んっんん、」
そのままキスは激しくなり、気が付けば私とオッパは寝室にいた。
オッパの大きくてゴツゴツした男の人らしい手は、私の敏感な所を的確に刺激していく。
その度に、私は興奮と快楽を覚えて、はしたなく声をあげる事しか出来ない。
私は最早抵抗なんてしてる余裕もなく、彼の熱に溺れていくだけになっていた。
・
その後。
2人でベッドに入った。
「オッパ、前の匂いの方が良かった?」
ハンドクリームの匂いが嫌だったのかなと思って聞くと、
『俺は前のが好みだったな』
と少し素っ気なく答えて、また私の首に顔を埋める。
「...ん、じゃあ前のやつに戻そっかな」
『戻すのか?』
「うん。だってオッパ好みの女の子でいたいもん」
『...そうかよ。まあ俺は充分このままでも好みだから心配すんなよ』
なんて言って、片方の口角を上げて笑ったオッパはとてもかっこよかった。