第4章 黒い宝石
淡々と話を進める二人のやり取りを呆然と見つめるシュヴァリエと
冷静に事の成り行きを見定め話を聞きながらさらさらと
報告書の作成に取り掛かっているラフィネ
"最後の願い確かに叶えた
我は我を必要とする者が現れるまで再び眠りにつく
が、お前がその娘を不幸にするようなことがあれば
その時は・・・・・"
「分かっている」
テリオスの決意に満ちた目をランプの精は見つめ
眠っているレイの頭に軽く触れてから姿を一瞬で消し去った
「・・・・・・消えた?」
「消えましたね」
忽然と消えた空間を見つめたままのシュヴァリエが
やっとの思いで口にした言葉にラフィネが答えた
「・・・生きてる?」
次にテリオスの腕の中にいるレイに目を向けた
夜着らしい薄手の衣服を身に纏っているレイ
薄手の衣服越しに見える手足は色が白い
「シヴァー、夜着姿の女性を
そんなに見つめてはいけません
ましてやこの御方は
テリオスの大事な姫なのですからなおさらです」
「ッ!!?」
ラフィネの言葉でレイを見ていた視線を上げれば
テリオスが射殺す様な冷たく鋭い目をシュヴァリエに向けていた
「違うっ違うぞテリオスッ!
色があまりにも白かったから
心配しただけだぞ!やましい気持ちは
これっぽっっちも無いからな!!!」
「・・・シュヴァリエ」
「はい殿下!」
テリオスが愛称で呼ばない時は友としてではなく
主として命令をする時だ
「羽織る物を」
すぐに!と答え
大急ぎで宝物庫を飛び出していった
「テリオス王太子殿下
いかがなさいましたか?」
宝物庫の扉の横に待機していた見張りは
急いで駆けていくシュヴァリエを不審に思い
宝物庫の扉越しにテリオスに声をかけた
「問題ない」
一言だけの返事が聞こえてきた
王太子が問題ないと言うのであれば
それ以上追及することは無いと口を閉じた