第1章 不思議な桜
「おら行くぞ日向ー」
隠れて練習してるつもりなんだろうが、田中の早い登校、裏庭での菅原と日向の昼練は
(バレバレだっての)
と上の階から下を眺める。
すると隣の窓から
「苗ー!今日は部活出なさいよー!」
と演劇部部長の宮田が下に声をかける。同時に日向達がこちらに気づきそそくさと立ち去り
「苗ー、逃げないように!」
と、その間にもそう言われる苗と呼ばれる女子生徒を見るとなんとあの時の桜の子。
宮田に気づくとひらひらと手を振り返し、校舎の入口とは反対方向に進んで行ってしまう。
「授業に出なさい!!!」
とさらにつっこみをいれれば、またこちらを見てへらへらとした表情で校舎の入口に向かった。
あのバカ。と言いながら窓から離れる宮田と目が合うと
「あ、澤村お疲れー」
と声をかけられ
「お疲れ様」
と返せば
「今の見られちゃったね」
と苦笑い。
「大変そうだな」
あんな堂々と授業をサボる女の子がいるだろうか?これならまだ自分の部の方がと比べてしまう。
「あー、まぁ、なんと言うかマイペースな奴で。けど期待の後輩なの」
と宮田は笑顔でそう言った。
話を聞いていると彼女は一つ下で、校内では有名だそうだ。
「苗名って聞いたことない?」
「ないなぁ」
「えー結構有名なはずなんだけどなぁ」
と残念がられながらも二人で教室へ戻っていった。
「苗さんでしょ?わかるよ」
「清水も分かるのかー」
「俺も知ってるー。去年から宮田とのやり取りが有名。あ、ほら」
とその日の部活中、その話題をふると清水はじめ、菅原も苗を知っており、指された先には丁度宮田に追いかけられてる姿だった。
「苗は去年からあんな奴っすよ。」
そう言う田中は
「俺はあんま好かないっす」
その言葉は練習に遅れ、部長の手を煩わせ、チームワークができないのか自由気ままで、それでも尚、部に居る苗への田中の不満に思えた。
以来、気にかけてみれば
「苗!」
「苗?!」
「苗ー!!」