第3章 想起1
慌てて少女は飛影の腕を掴む。
「待って!今の雪菜って子はアナタの妹さんなの?」
「…ああ」
「じゃあアナタは飛影って名前なんだね、私は優愛だよ。」
飛影は構わず外へ行こうとする。
「あの!急ぎたい気持ちはわかるけどお腹空いて倒れたんだからなんか食べてから行かないと雪菜ちゃんを助けられないよ!」
また倒れちゃうよ!と叱責する優愛。
飛影は舌打ちし、大人しくそこへ留まった。
「もうできるから少し待ってね」
台所へ行く優愛は鍋にあるものを少しずつさらに盛る。
二つの皿を持ってきた。
「はい、カレーだよ!まだこれ位の料理しかできないけど」
控えめに言って飛影の前にだす。
目の前の料理を物珍しく見る。
そしておずおずとスプーンでカレーを口に運ぶ。
口の中に広がる温かい味、何か心地良さを感じる。
気が付いたら夢中でそれを食べていた。
残さず食べると優愛はすごく喜んだ。
片付けをしている優愛に飛影は訊ねた。
「人間は…お前は…誰にでもこんなことするのか?」
「ん…誰にでもってわけじゃないかも君の瞳が私と似ていたから…かな」
何を言ってるんだ?という顔で飛影は優愛を見た。
「寂しそうだったから…私、独りなんだ、両親死んだし」
「そうか…」
「だから飛影は雪菜ちゃんを妹を助けに行かなきゃね!」
飛影は目を逸らす。
こいつも独りぼっちなのか…と思った。
そして立ち上がり行こうとする飛影に優愛は思わず呼び止める。
「飛影。」
「どうした?」
「また会える?」
「わからん」
「じゃあこれで約束して」
優愛が取り出したのは紅いミサンガだった。
「なんだこれは」
「ミサンガだよ!両親に教わったんだけどプロミスリングって言って身に着けるものなの。これ着けて約束してまた会いにくるって」
私も付けてるんだよと右手首のピンクのミサンガを見せる。飛影はめんどくさそうな顔をしたが何故か断れなかった。
優愛は笑顔で飛影の右手首にミサンガを巻き付ける。
「またね、飛影」
さっきのビデオを優愛は飛影に渡す。
「雪菜ちゃんを必ず救ってね!」
「……ああ」
飛影は初めての温もりに戸惑いつつ頷き去って行った。