第25章 本心
太郎太刀は体格があるせいか、皿を食器棚へと片そうとして腕をぶつけた。
途端、けたたましい音と共に皿が床に叩き付けられ割れてしまった。
主「だ、大丈夫!?」
蛇口を捻り水を止め、手拭いで濡れた手を拭えば慌てて駆け寄った。
太郎「すみません。私の身体が大きいばかりに…皿が」
しゅん、と表情を曇らせる太郎太刀に笑い掛けた。
主「大丈夫大丈夫、何より太郎太刀に怪我が無くて良かった…。さ、片付けちゃお!……いっ!!」
割れた皿を片付け様と手を伸ばし破片を掴んだ瞬間、割れた破片で指を切ってしまった。
すると、そっと手首を掴まれ太郎太刀の口へ指が運ばれる。
太郎「……ん」
太郎太刀の口に指が含まれ、大きな身体とは裏腹な柔らかい舌で優しく繊細に血を舐め取られる。
その光景は…きゅん、と私の胸を締め付けた。
主「た…太郎?」
太郎「…割れた皿は危険です、安易に触れてはいけませんよ?」
忠告をしているというのに、微笑んでくれる。
あまり表情の変化が窺えなかった太郎太刀の笑顔は優しいんだと、私はこの時初めて知った。
主「あ…り…がと…」
ドキドキと激しく高鳴る鼓動を何とか抑え様としても、上手くいかない。
ぽつりと呟く様に私が言えば、ぽんぽんと優しく頭を撫でてくれた。
次郎「兄貴ぃぃぃ!まだかぁぁいぃぃ!?」
飲み仲間があの三日月しか居ないと、やはり少々居心地が悪いんだろう。
痺れを切らした次郎太刀の声が聞こえて来ると、太郎太刀は一度広間の方に顔を向けるも再び私を見る。
太郎「さて…後は私が片付けておきますので、主様はもうお休みになって下さい」
主「…でも」
太郎「正直言うと…私はお慕いしている貴女が、三日月さんに絡まれている所を…あまり見たくないのです」
真っ直ぐに私を捉える金色の瞳に、自分が映る。
ドキン、と速くなる鼓動に目が自然と泳いでしまう。
それを隠したくて、太郎太刀の言葉に頷くと審神者部屋へと戻った。