第36章 狐の婿入り
主「そんなの…やだ」
小狐丸「…っ…そう、ですよね。こんな、私が…ぬし様を慕うなど…」
違う!
そう言いたくて、でも喉が詰まってしまったかの様に言葉が詰まって出て来ない。
私はこのまま彼が出て行ってしまう事を恐れ、抱き締め返した。
そして今度は私から彼と身体を離し、真っ直ぐに見て息を大きく吸い込む。
主「大好きだって…言った。なのに…我慢なんて、しちゃヤだよ…!」
小狐丸「…っ…ぬし…様…」
自分でも大胆な発言だったと思う…顔から火が出そうな程、熱が集まって来る。
それでもそれは…瞼をぎゅっと閉じ、意を決して言った言葉だった。
小狐丸「…っ…く…」
主「……っ!?」
再び瞼を開くと、少し俯いた彼の目からは大粒の涙が零れていた。
私、小狐丸を傷付ける様な事を言ってしまったのだろうか?
内心の焦りが表情に変化を与える…知らず知らずに眉が下がり、じっと彼を見詰めてしまっていた。
私の視線に気付くと、顔を上げて涙を流しながら微笑みを浮かべる。その笑顔は儚げで、とても尊いものだと感じさせた。
私は涙を流し続ける彼を、私は再び抱き締めた。
小狐丸「私はあの本丸で、三日月殿らと共に…あんな…あんな穢らわしき行為を…」
主「…そんなの、関係無い」
小狐丸「こんなに穢れ、情欲のままにぬし様を物にしようとした私を…好き?」
小狐丸は抱き締め返す事はせず、自らの手を汚い物でも見るかの様に見ては…唇を噛む。