第20章 想い届く
-Nside-
空が青い…
俺の気持ちはどんよりグレーだけど、空は抜けるように青くて綺麗だ。
あ、飛行機雲…
“見て見て!飛行機雲!”
“本当だ!すごいね!”
“長いー!”
“飛行機雲っていうのはね…”
“出たよ、翔の豆知識”
頭の中でみんなの笑い声が響いて。
現実との差に悲しくなった。
どんなに天気が良くても、面白いものを見つけても、それを分かち合える人たちはもういない。
翔ちゃんも智も。
雅紀も潤くんも。
誰もいない。
1人になっちゃった…
涙が出そう。
天気が良すぎるせいだ。
溢れそうな涙を眩しさのせいにして、ギュッと目をつぶった。
3日ぶりに登校した朝、翔ちゃんに何事もなかったかのように声を掛けられて。
嬉しくて。
でも悲しくて。
俺の一大決心は、翔ちゃんには伝わってないのかと虚しくなった。
でも仕方ない。
翔ちゃんは俺の気持ちなんて知らないんだ。
伝えてないんだから当たり前だよ。
翔ちゃんは優しいから、ただのクラスメイトに戻ったって普通に挨拶するし、学校を休めば心配してくれちゃうんだ。
でも、ごめんね。
まだ俺が無理なんだ。
自分から言い出したくせに、まだ翔ちゃんのことただのクラスメイトだって思えない。
話し掛けられただけで涙が出そう。
顔を見ただけでも涙が出そうになるんだよ。
もう翔ちゃんて呼んじゃダメなんだって。
頭では分かってたけど、“櫻井くん”って口にした瞬間には胸が痛くて息もできなかった。