第6章 因果
この少年は偶にだがこう云う核心を突く様な事を云ってくる。
「なんてねーまあ彼も面白い人だから混ぜたら楽しいって所なんでしょ」そう云ってふにゃりと笑う太宰。核心を突いたと思えば煙に巻いたような笑みを作ってみせる。森はこの少年の可能性にも注目していた。
若し強力な異能力者である織田と彼女を混ぜたら。若しこの少年と彼女を混ぜたら。
何か善い化学反応が起こるのではないかーーそう考えたのは確かだった。もしかしたら『来る日』の為に自分が手札を増やそうとしているのも彼はお見通しなのかもしれない。だが森にとっては、それでも未だこの少年が自分に協力してくれている、と云う事実だけで充分だった。
「まあそんな所だよ」本当の所は胸に秘めたまま、森はそう云って微笑んだ。
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報告書第085
『橘優凪の異能力解析』
× × 月× × 日、今回は通常の氷結化実験以外を試す事に致した。
二つのビーカーに同じ分量の水を入れ、片方の水を減らして見せよと命令。対象が異能を駆使した後、極々僅かではあるが指示したビーカーの水量が減っていたことを確認。
これにより件の異能力者の能力に付いて訂正を加えたいと思う。
空気中の水分を蒸発若しくは冷却する異能力と現時点で断定する。
尚、冷却に関してはある程度イメエジさえ浮かべば遠距離からでも発動可能である。蒸発に関しては半径5m以内で無ければ発動不可。
蒸発が『人体における水分量の調節』まで可能かは不明。だが可能性としては充分に有り得るものと推測。若し人体に及ぶものであればーー対象は人体の水分を蒸発させる事で容易く死に至らしめる事も可能であろう。
以上
報告者 専任研究員 三浦