第5章 追懐
目を開けるとそこは、白い、見慣れた天井だった。
あれ、私……何をしてたんだろう?それに、ここは…
橘総合病院の病室では無いだろうか。
よく見知った風景から、直感できっとそうだと確信した。
「おや、お目覚めかい?」
その声の主に優凪はびくりと身体を震わせた。ーー先程の少年、太宰治だ。
ベッド横に据えられた椅子の上で足を組み、此方をニコニコとあの笑顔でいてちっとも笑ってないような、不思議な笑顔で見詰めていた。先程の様に銃を突きつけられはしないかと数秒待ったが、、、迚もそんな雰囲気には見えない。
「え……っと、、はい、今目が覚めました」
「……ふふ、お目覚めかいとは言ったけど、返事をしろとは言っていないよ、君は律儀だね!!」
そう言うと太宰は椅子の上から転げ落ちそうな程腹を抱えて笑っていた。……何がおかしかったんだろう……
銃口を突きつけられた時とは、うってかわって穏やかというか。…雰囲気の掴みづらい、変な人だ。
そう思いつつ、優凪は視線で織田作の姿を探した。ここには居ないようだ。
「あの、すみません、織田作さんはどちらに…??」
「織田作?ああ、さっきの益荒男だね」
(ますらお…??)
「強くて立派な男の事だよ」
そう云うと太宰は首で病室の出入口を指した。
「彼なら君の為に見舞いの品を買って来た所だよ」
その言葉の通り、出入口には何やらものがいっぱい詰め込まれた茶袋にやや目を見開き驚いた表情の織田作が居た。