第5章 〜怪盗キッド対策会議
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長らく続いた会議が終わると、刑事達が次々に会議室から出てきた。コナンは同じ階の休憩スペースから、それを見て早足で出入り口に駆け寄る。そうして小五郎と安室を待っていたが、先にNAME1#と広光が現れると直ぐに険しい顔で其方に走った
「(ちくしょー、真逆、彼奴らに付けて直ぐ盗聴がバレるなんて思わなかった…!見た目で俺がやったとは思わないだろうが、安室さんなのかあの二人なのか壊した奴を把握しねぇと!)」
荒れた調子でそう思い至ると、内心の苛立ちを隠し乍ら麻衣達にあざとく声をかけた
「あ!ねぇねぇ、お姉さんお兄さん!実はさっき気になった事があったんだけど───」
「他所に当たれ。俺たちは暇じゃない」
言い切る前に遮られてしまった。うんざりした様な声音と態度で。そして、広光は冷ややかにそう告げる傍ら、コナンに小さな紙屑を放り投げる。「え、え?」僅かに戸惑いながらも、放物線を描くそれは少年が小さなその手に収めた
「……庁内で罪を犯してどんな気分だ」
「!!」
何となく紙屑を見つめていたが、聞こえた声にハッと顔を上げる。二人は既に背を向けていた。脳裏に嫌な予感が過ぎる。
そこで、コナンは物怖じしながら両手で紙屑を広げてみた。すると中身は壊れた盗聴器があり、メッセージが数行書かれていた
【好奇心は猫をも殺す。今回に限り見逃してやる】
文章を見たコナンは人目を憚らず、「くそっ!」と小さく舌打ちした。恐怖や悔しい以上に腹立たしかった。まるで犯罪者扱いではないか
「(どうしてこうも上手くいかねぇ?!一体彼奴らは何なんだ?!)」
そう考えるコナンは最早、自分のした事に自覚がない。署内で盗聴器を使用するなど、警察を愚弄する犯罪行為なのに。だが、止まらないのだ。高ぶっている対抗心の抑え方を知らない
まず、誰をも魅せる不思議な異質感、周囲を逸脱した思考と発言、徹底された機密情報、神職の家系で公務員兼業、詳細不明の政府保護など。国家は彼女達を保証するらしいが、納得出来るかは別問題だ。コナンを説教して見せた時の、正論な言動とは裏腹な威圧感は害意が無くとも普通の護衛じゃない。悪印象だけが強くなって嫌悪感が強まっていく
秘密を知りたい
無知でいれない
自分は正しい
間違いを排除したい
正義に燃える悪気ない少年は悪い方向に加速する───
