第19章 〜大阪心霊現象ミステリー 初日編〜
「あんたはん、東都から神社の巫女さん方が到着したわ」
「そうか…。やったらここに御通ししなさい、全員揃ってきちんと話そう」
僅かに冷めた声音の三船典子が夫らしき相手に声をかけると、中からいかにも厳粛そうな男性の声が応えた。こちらも少し妻に対して不機嫌そうで、丁寧な言葉に刺々しい苛立ちを誰もが感じとった。しかし妻は客人の前だからか意に返さない素振りで麻衣達の方へ振り返り、「狭いですがどうぞ」と言って大きく開けたドアの向こうに客人四人を通した
「……あっ!」
「ええっ?!」
「おっ!」
麻衣達が中に入った途端、幼い子供と大人とみられる男女が一斉に驚いた声が部屋に響き渡った。元々、夫婦の冷ややかな掛け合いのせいか、何処か気まずい空気で静まり返っていた部屋なのだ。大した声量でなくとも大きく聞こえた三者の声に、麻衣と安室は二重で驚かされる事になる
「……驚きました。まさか東都からの探偵というのは、」
「毛利先生の事だったんですか!」
麻衣は目を見開いて口を覆う上品な仕草で、安室は虚をつかれた様に平静を忘れた声でそれぞれ驚いていた。よもや県外に出てまで、仕事で顔を合わせるなどとは思わない。なので双方が呆然と互いを見合っていれば、コナンの隣の席に座る服部が「なんや、あの姉ちゃんら、お前らの知り合いか?」とコナンに向かって尋ねる
「あ、うん、そうだよ!今まで出かけた先で何度か会って、よく話してるお姉さんなんだ」
「……ほぉ〜ん、そうやったんか」
知り合いだというコナンの言葉に軽い相槌を打ちつつ、服部の視線は訝しみを含んで麻衣達に注がれている。巫女服を纏った女が先頭を歩き、その両脇を黒いスーツを着込んだ男二人が張り付いているのだ。一度出会った事がある探偵の安室を除き、麻衣と他の男二人に自然と目が向いてしまっていた
「(なんや、ボディガード付きの巫女さんなんて初めて見たな…。そんだけ由緒ある家柄なんか、ごっつ強そうで隙がない…)」
胸中でそんな分析を行う服部を他所に、周りは三船典子が麻衣達に「部屋が狭くて椅子も二つしかないんです」と申し訳なさげにしていた。すると「だったら私のを使ってください」と蘭が立ち上がり、「私ら立っとくんでどうぞ」と和葉も席を譲ろうと起立する