第12章 落とし穴
「ま、待って!2人とも待って!私足をくじいて動けないの!お願いだから助けてください…!」
遠ざかろうとした喜八郎と滝夜叉丸は再び穴の中を見下ろした。
綾「まだ一般人の演技してるんですか?いつまで続くか見ものですね。」
滝「…ゆうきさん、一部の先輩方と仲良くされてるようですが、四年は皆貴女のことを嫌いですよ。それでは。」
無情にも2人はゆうきを穴の中に残して去ってしまった。
「そ、そんな…」
ここは校庭の隅。いつ助けが来てくれるか分からない。いや、もしかしたら自分がいなくなっても誰も探してさえくれないかもしれない。
足がじんじんと痛みを増していく。
謂れのないことで傷つけられ、そして何より13歳の子に抵抗できずはしたない声を聞かせ股を濡らしてしまった情けなさにゆうきは声を押し殺して泣いた。
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滝「ったく、何してるんだお前は!」
綾「んーつまみ食い?滝夜叉丸のせいで食べ損ねちゃった。」
ゴチンと滝夜叉丸が喜八郎の頭にゲンコツを落とす。
滝「アホハチロー、要注意人物に1人で近づくやつがあるか!」
綾「でも僕が穴に入ったくらいから、滝見ててくれたでしょ。」
滝「探してたお前が穴に入るところがたまたま見えたからな。穴の中にいる人物が分かってからは、あの女が何かアクションを起こす前にすぐ喜八郎を助けられるよう見張っていた。」
綾「それならすぐ声かければよかったのに。しばらく覗いてたでしょ?」
滝「なっ、この優秀な平滝夜叉丸が覗きなど!」
綾「むっつり助平。」
滝「断じて違う!…お前こそ私がいたのに気づいててなんであんなことになるんだ。」
綾「滝夜叉丸も今度は仲間に入れてあげるよ。可愛かったよ、あの人。」
滝「考えておく…。」
そんなくだらない会話を繰り広げながら2人は建物の方へ戻って行った。