第1章 ひとり旅
私の両親はごく普通の共働き夫婦で、私はごく一般的な家庭で育った。それでも何不自由なく生活でき、大学まで出してもらった。
社会人になって自立した時、両親は安心してくれたが、どこか寂しそうであった。働いていつか2人を旅行に連れて行ってあげようと思い、少ない給料を少しずつ貯金していた。
しかし、半年前不慮の事故で最愛の両親を亡くしてしまった…。あまりに突然のことだった。
優しくしてくれる親戚も、仲の良い友人もいるが、心の中にぽっかりと穴が空いてしまったような気持ちがいつまでも続いている。
「天涯孤独になったような気持ちだ…」ハッと我にかえり、また感傷に浸ってしまった、いかんいかんと首を振る。