第24章 まだ手は出さない…お前から求めるまでは、な。
脱衣所で部屋着に着替え僅かなカーテンの隙間からチラ、と部屋を覗く。
それはこの部屋の住人の確認。
幸いな事にまだ帰って来ていないようだ。
よし!今のうち…
忍足でそそくさと部屋を出る。
もう扉は目前だったのに。
ーガチャ
惜しくも間に合わず姿を現した部屋の住人。
「…ッ!」
「なんだ」
「別に…航路は決まったようね」
「なんで知ってんだ」
「え⁉…た、たまたま見てたのよ」
ローの行動を昼夜目で追っているなんて、口が裂けても言えやしない。
「………」
「な、何よ」
ジッと私を見ているローの視線が耐えられない。
「お前なんか良い匂いするな」
「えっ…」
彼の真っ直ぐな瞳を最後に私は腕を引っ張られ抱きしめられた。
!!!??
シャワーで温まった背中に回る腕や手の冷たさが現実だと思い知らせる。
エリナはされるがまま何も出来ないでいた。
「…なんの香りだ?」
首やうなじに掠めるローの息が。
耳元で囁かれる低い声が。
エリナの思考を遮断させる。
ただその行為をジッと耐える事しか出来なかった。
「くく…世界に恐るる魔女と言われてんのに、これじゃあまるで子猫だな」
全身に力が入って固まっているエリナにローは皮肉に笑う。
「うっ、うるさいわよ…は、離して!」
「却下」
「何それ⁉」
するとローはより一層抱き締める腕に力を込める。