第38章 所詮私はアリ一匹なんだ
「さて…本題に入るが」
ベガパンクは私の居るベットの周りをゆっくりと周回する。
「今日より君は私の研究対象となる。嬉しいよ」
歩くベガパンクを視線だけで追う。
「君達魔女の一族をやっとこうして研究出来るんだ!その血筋と指輪…何度この日を夢に見たか!」
白目をむき出して歓喜に溺れるベガパンク。
「君はこの部屋を生活拠点としてもらう。この場以外外出は一切禁止だ。必要な物があれば使いに言え」
告げられたのは監禁生活。
これから365日彼の研究に身を捧げる事。
エリナは初めから抵抗などしていなかった。
私はこの海軍本部のお庭の中じゃあ所詮アリ一匹なのだ。
逃げられる訳がない。
これからの運命を受け入れる覚悟なんて、必要ない。
自我を忘れればいい。
人形のように。
「その代わり条件よ」
ベガパンクの高笑いは止まった。
「この血を抜いて好きなだけ実験すればいい。ただ私は一切、子孫を残さないわ。子供は産まない」
これが何を意味しているのか。
純血の魔女が生まれないという事。
私は純血だった。
特にその血筋は強力で崇められる存在だった。
子孫を残さない事により純血の魔女は生まれない。
そのかわりに私に流れる血が決めた後継者のみがこの力を継がれる事になる。
選択は本人の意思ではない。
最終的に血が選ぶかは別問題である。
ベガパンクの知識ではこんな事はもう既に把握済みではあろう。
「身を捧げる代わりに交換条件か…ふふふ、まぁ構わん。これから私の支配下では、いずれ君はその純血の血筋を呪いたくなる日が来るだろう」
部屋を後にするベガパンクを確認して、布団に顔を埋めた。
ロー…。
ーーーごめん。
こうして私の監禁生活は始まった。