第3章 【R18/現パロ】お願い、捨てないで
時刻は0時をとっくに過ぎ、11月01日。
酒が入っているせいでいつも以上に体力が無く、ネクタイを緩めて深呼吸してから家の玄関の扉を開けた。
扉を開け、しばらくするとさゆりは必ず出迎えてくれる……はずだったが、部屋には誰も居なかった。
「……さゆり」
玄関先で棒立ちのミケは、ハッとして靴を脱ぐ。
きっと寝てしまったんだ。
寝室を覗く。いない。廊下で立ち尽くす。
全部屋の電気は消されているのを廊下から確認した。
人の気配は全くない。
「さゆり……」
電話を鳴らすが、出ない。
飲み会前、19時に送ったメッセージを最後に既読がない。
「クソ……なんで出ないんだ」
ミケはスマートフォンを投げ、髪を片手でぐしゃぐしゃと乱した。
会社の人間の言葉の信憑性が増すばかりのこの状況。焦りからか珍しく感情が上手くコントロール出来ない。
月明かりのみの寝室でベッドに座り、投げたスマートフォンを睨む。一向に鳴らないスマートフォン。
ガチャ、と玄関で鍵が開く音が聞こえた。
時刻は多分、2時前。
バッと立ち上がり、寝室を出た。
「きゃっ!?み、ミケ……!?」
靴を脱いで上がり、電気を消したばかりの暗い玄関でさゆりの声が聞こえた。
その腕を掴み、寝室へ連れていった。