第7章 近づく距離
「なんだって?」
あたしはすっかり機嫌が直ったけど大我はまだ機嫌が悪い。
「BOSSが仕事できるようにしてくれるって!」
「じゃあ、俺もやるか…」
パットの言うことが通らないなんて事はあり得ないって分かってる大我はすぐに気持ちを切り替えてくれた。
裏から手を回すなんてズルいのかもしれない。
だけど、手を回してくれたのはあたしを評価してくれてるからだって信じてる。
だってBOSSはそういう人だから。
弟子だからって仕事で贔屓したことなんてないってコレクションの後にはっきり言ってくれたからあたしは自信が持てた。
「カーテン開けるね。筋肉の付き方と筋の通ってる位置をしっかり確認したいからちょっと触るけどくすぐったかったら言って」
「あぁ」
もう今日は仕事はしなくてもいいと思ってたけど、仕事ができるなら進めておきたい。
見慣れてると思ってた大我の体は、触ってみると思ったよりもずっと筋肉がついていて鍛えられてた。
「座って上に腕伸ばして」
「おい、すげーくすぐってぇんだけど」
「ごめん。もうちょっとだから」
これはくすぐったいっていう人が多い。
脇腹の筋肉を指で触って確認するんだけど女優さんだと何度も休憩して、10分ぐらいかかる人もいる。
「今度窓に背中向けて」
「うん。OK」
綺麗に鍛えられてて多分あんまりメイクはいらなさそう。
問題は夕方のシーンのラインをどこまで取るかだよね…
大我にさっきの手直しされたデッサンを見せながら、これをするとなるとどこまで描かなきゃいけないかを説明した。
「ぜってーやだ。そんな話聞いてねぇ」
説明しきる前に即答で却下だった。
「だよね。ちょっとハンナと相談しなおす。おへその下5センチ位までならいい?」
「あぁ。でもそれ以上はぜってーやらねーぞ」
さっきよりは全然険しくないけど、それでも本当に嫌そうにする大我に同情しながらハンナに電話をかけた。