第25章 起憶
撮り終えた箇所のOKが出て、午前中の予定を全て消化した。
アクターがそれぞれの控室に戻ってから、セクションごとに必要な打合せを済ませてスタッフも休憩に入る。
メーカーや撮影関係者が用意してくれた軽食と飲み物をそれぞれが好きなように取って、それぞれのタイミングで休憩に入った。
あたしも控室に戻ろ…
カレンやサラを視界に入れていると、言いようのない恐怖を感じて全てに疑心暗鬼になるせいなのか神経が疲れる。
恐怖を感じてるせいなのか脳が興奮してるような気がして、このままでは何か大きなミスをしでかしそうな気がする。
とにかく自分の精神を落ち着かせる為に安心できるところにいきたい。
手の甲に付けた香りを強く吸い込んで、自分の荷物を手早くまとめてからチーフに声をかけてペントハウスを出た。
静まり返ったカーペットの通路に自分の足音だけが響く
少しでも早く控室に戻りたくて自然と足が早まって、さほど遠くないエレベーターホールまでの距離がなぜか遠く感じる。
カレンもサラもとっくに自分の控室に戻ってるんだから、こんな風に焦ったり恐怖を感じたりしなくていいはずなのに。
あんな風に不気味な態度を取られるくらいなら、昨日までみたいに分かりやすく敵意を向けられていた方がごちゃごちゃと考えなくてよかったのかもしれない。
だけど、その敵意をスルーできるのかと聞かれたら自信はない。
自分の気持ちや考えがごちゃごちゃしてどうしていいのか分からない。
とにかく今は仕事をやり切るんだって何度自分に言い聞かせても、すぐにカレンとサラのことが気になってしまう。
いつのも何倍も遠く感じたエレベーターホールにやっとたどり着いて、エレベーターのドアを開くためにボタンを押そうとしたけど……
どうしてもそれが………
できなかった……