第25章 起憶
可愛いこと言えるようになりたいな…
青峰君が思う可愛いが全く分からないから、何を言えばいいかもわからないけど…
「あー……5分経っちまった。あと5分延長しようぜ」
「…さっき1回延長したからダメなの。ホントに遅刻しちゃう」
「ならあと1分。キスさせろ」
あたしの返事をする時間なんて全くなかった
一瞬で唇が重なって、いつもよりも素早くあたしに入り込んで口内をそっと撫でられる
どちらのものか分からない程混じり合って、重なり合って
あたしの頭をくしゃくしゃに撫でてたくさんの愛情が注がれる
頬、フェイスライン、首、その全部に触れるように自分の手を青峰君の顔に置くと、指に当たる頸動脈から心拍数を感じた
いつもより早いそのサイナスリズムはあたしのものと重なっているような気がして、さらにあたしを駆り立てた
もっと
もっとキスして
呼吸なんてできなくていい
青峰君のキスで窒息するならそれでいい
……そんな風に思えた
ベッドを出る時間
それでもキスがやめられなくて、抱き合ってキスをしたまま一緒に起き上がって
しばらく座ったままキスをし続けた
もう1分なんてとっくに過ぎてる
あたしはダメダメいいながら、結局離れたくない
唇がやっと離れて、抱きしめたままガウンを器用に着させてくれる青峰君にだらだらともたれかかって呼吸を整えた
そして……
出がけ直前…あたしたちはものすごいスピードで用意を整えた。
「青峰君が頭ぐっちゃにするからっ‼‼」
「お前が煽るからだろ‼‼梳かしてやっから化粧しろ」
「煽ってないもん‼それにブラシするにも色々順番があるのっ」
「毎日見てんだから覚えてるっつーんだよ。青いのスプレーしてこの荒いので梳かして次がオレンジの油つけてこのげじげじの変な形ので梳かして最後がこのもさもさの豚毛だろ!」
「あ……うん…そうです……」
びっくりだった。
青峰君は確かにいつもそばであたしの髪の手入れとか見てて色々聞かれたりはしてたけど、覚えててくれてるなんて思わなかった
なんか…嬉しい…
普段はしないことだからちょっと手つきがおぼつかないけど、嬉しくて思わず笑みがこぼれた
「笑ってんじゃねーよ(笑)」
「青峰君も笑ってる」