第6章 take off

搭乗のアナウンスで自分の席に着いて、予定通りなら離陸してるはずの時間なのに飛行機はまだ滑走路にすら入ってない


なんかトラブルかな…
まさか飛ばないなんてことないよね…？


早めにNYに入る日程にはしてるけど、予定通り入れないのは時差ボケがちょっとしんどい。

しかも迎えに来てくれるってことは、青峰さんだって時間を調整してフライトを取ってくれてるはずだし…


腕時計に目を落として、既に離陸予定を20分過ぎている理由をCAに尋ねた


『何かトラブル？』

『申し訳ありません。搭乗の遅れているお客様がいらっしゃいまして、機体トラブルではないのでこのままお待ちください』


そういうことか……

911以降にできた荷物と搭乗者の一致ってルールが離陸の遅れの理由。

焦っても仕方ないし、乗客が乗り込めばそのうち離陸できる。




(すみません。離陸が少し遅れてるのでまた時間連絡入れます)

青峰さんに遅れそうだってことをメッセージして、またメイクブックを開いた。






そして、離陸予定を30分以上過ぎたころ、ようやく離陸のアナウンスが流れた。



何度も乗った飛行機だけど今ほど緊張するフライトは初めてかもしれない。


目標の一つだったコレクションでの初仕事

もう会うことはないと思っていたのに、偶然が重なって思いがけず会えることになった好きな人。



機体がゆっくりと滑走路に入って滑るように加速する


体に掛かる重力もエンジン音も、もう何度も経験して慣れてるはずなのに……

今のあたしには、なんだかそれが特別な瞬間に感じられた。
恋愛なんて初めてだけど、遠距離のカップルが会う時ってこんな気持ちなのかもしれない。



仕事に対する緊張と期待。
青峰さんに会える嬉しさともう会えなくなる寂しさ、ドキドキする気持ち。

入り乱れる感情の中、機体が宙に浮くのを感じる







いよいよNYへ

Take　Off