第18章 劣等感
今日でLA最後の日。
仕事で急に呼び出されたママが出かけて、お腹を空かせた大我にハンナと一緒にあの生春巻きを作った。
『味はいつも目分量なんだけど…醤油とこの昆布のおだしとシソとワサビを入れて、体調とかコンディションに合わせてオイルは入れるか入れないか本人に決めさせるの』
『日本食ってホントにだしとか風味が強くておいしいわよね』
『確かにそうかも。だけど意外と糖質と塩分が高いの。試合期間は糖質が少し高めでもいいんだけど繊維を取らせすぎはよくなくて、塩分の高い食事は通年控えた方がいいの』
大我はしなくていいって言ってても、ハンナは少しでも覚えたいって言ってちょこちょこ一緒にお料理をしてる。
あたしはお料理のレパートリーは少ないけど、栄養学の面ではそれなりに教えることはできる。
昆布や鰹節の選び方と、どうやったら思い通りにお出汁が取れるかを教えて、あとは大我の好きな食べ物を一緒に作ったりした。
パンはすぐには難しいけど、おばあちゃんも来てくれて、3人でつくったグルテンフリーのパンを大我はすっごく嬉しそうに食べてた。
好きな人を支えたいって気持ちは素敵だと思う。
あたしは遠距離だし、しょっちゅう何かすることはできないけど、青峰君はあたしのご飯をおいしいって言ってくれるから、日本ではできるだけ手料理を作れるようにしたいって思ってる。
ハンナと一緒に作った生春巻きをダイニングに出すと、大我がすっごく喜んでハンナにキスしてお礼しててあたしも嬉しくなった
『おいしい?』
『すげぇうまい』
ラブラブな二人を目の前にしてあたしは一人で自分の口に生春巻きを運ぶ。
『ミサキはタイガのことほんとに何でも知ってるのね。ちょっと妬けちゃう』
『一緒にいる時間が無駄に多かったから』
焼きもちを妬いてるってことをそんな風に可愛く正直に言えちゃうハンナがすっごくかわいい。
『そうそう。こいつのお守りで寿命が来ちまうかと思ってた。青峰がいて助かったぜ』
『失礼な。大我のお世話でおばあさんになるとこだった。ハンナがいてくれてほんとよかった』
こんな悪態ついてるけどあたしは大我にすごく感謝してる。
だってずっとずっとあたしのお子守をしてくれた片割れだから。
前と少しだけ変わった関係はきっとあたしたちがお互いに大好きな相手を見つけた証拠なんだと思う。
