第1章 視線の先
「よかったー!いつもと同じに見られたら自信なくなる!」
だって今日はずっと楽しみだった特別な日で、しっかりヘアメイクしてお洋服も吟味したから。
いつもと違うは褒め言葉。
「そっスよね。あ、写真今撮ってる人たち終わったら撮れそうだけど…行く?」
「うん!お願いします」
大我がいきなり黄瀬くんを呼び止めるもんだから正直ドキッとしたけど、真太郎とのことについて何も聞かれなかったのはほっとした。
でも写真を撮る時に真太郎と話してるの見れば知り合いなのはきっとすぐ分かる。
「てか、なんで火神っちといるんすか?」
「えっとね、幼馴染なの」
「おい、終わったみたいだぜ」
黄瀬君に大我とのことを聞かれて答えたところで、丁度撮影の順番が回って来て高砂に座る先生の隣に立った。
「来てくれてほんとにありがとう」
「こちらこそ……」
呼んでいただけて嬉しいですって言いたかったのに、感極まって言葉にならなくて涙があふれた。
「そんなに泣くなよ。子供じゃねぇんだからよ」
何も言えないほど泣いているあたしに大我が笑いながらハンカチを貸してくれて、涙を拭うと黄瀬君が大我のスマホで写真を撮ってくれた。
撮ってもらった写真を大我にもらって早速両親に送ると、すぐに既読になったから、多分写真が送られてくるのを待ち構えていたんだと思う。
(先生綺麗ね。たいちゃんまた大きくなった?)
ママは大我をたいちゃんって呼ぶ。もう大人なのに未だに呼び方は子供の時のまま。
(先生綺麗でしょ。大我は大きくなってない。元々でっかい)
ママに返信してからスマホをしまってサーブされた料理に舌鼓を打つ。
オマール海老のグリルなんとかソースがもう絶品で明日も食べたいし、お肉料理も柔らかくてぺろりと食べれてしまった。
おいしいお料理と楽しい会話で、最高の披露宴はあっという間にデザートの時間を迎えた。
デザートはブッフェ形式。
真太郎と先生が欲しいものをお皿に乗せたりもしてくれて、たくさんの人がガーデンに出て会話を楽しんだりお酒を飲んだりしながら、プチケーキを選んでお皿に乗せてもらいつつ、改めて主役の二人にお祝いを伝えてる。