第17章 赤ずきんちゃん
ある地域にある、小さな村に産まれたユリア。
生まれた時は勿論だが、成長する過程で常に愛らしさと、18の年になる頃には村一番の美人として有名であった。
この頃には常に結婚の申し出が絶えず、ユリアは正直好みの男が居らず、好みでもない男に言い寄られて毎日うんざりしていた。
そんな毎日を過ごしていた時だった。
母は病気を患い、同じ時にユリアの母方の祖母が腰を悪くしてからは、家の事をしながら毎週祖母の家に日用品や食材をユリアが運んでいる。
父方の祖父母は亡くなっている為、親戚に一人しかいない祖母が大好きで、根っからのおばあちゃんっ子だ。
今日も食材を運ぶ為に、編みかごいっぱいに野菜や果物を入れて、余所行きの格好をする。
「ユリア、その“赤ずきん”、もう小さくなってきたじゃない?被るのやめたら?」
「いやよ。おばあちゃんがくれたんだもん。ずきんはおばあちゃんがおっきくしてくれてるから大丈夫だし」
「そうかも知れないけど、丈がねぇ。昔はすっぽりだったのに、今は腰までしか隠れないじゃない」
「いーの!可愛いって、おばあちゃんが言ってくれるし!じゃあ、行ってくるね」
「まぁっ、仕方ない子。気をつけて行くのよ?あ、馬に乗って行きなさい。最近、危ない噂があるじゃない?」
母親が言っている噂とは、近頃、森で若い女を狙って強姦するという事件が起こったこと。噂で囁かれる男は、満月の夜、月明かりが照らす森に現れることから「狼男」と呼ばれていた。
「暗くなる前に帰りなさいよ。本当は若くない母さんが行けばいいんだけど……」
「出来るだけ早く帰るね。いいから母さんは寝てて!」
母親が他にもユリアに傷薬やらを持たせようとしてきたので、ベッドに無理矢理寝かせ、馬に乗って祖母の家へと向かった。