第2章 あなたをください
ーーーオーベル家。
昔は裕福な家で父子が二人で暮らしていた。
その親子はある日突然消え、多額の借金を抱え蒸発したとされていた。
しかし、当時、新分隊長であったエルヴィンが兵団から遣いに出された際に訪れて事件は発覚したのだが、本来は蒸発では無く、一家の主、父親が殺害されたのだった。その犯人はオーベル家の長女であり唯一の生き残りであるエミリア、当時18歳。
エルヴィンに犯行現場を見られたエミリアはエルヴィンにある話をした。
エミリアの一族は特異体質にあった。
人の血液を一年に一度摂らなければ死に至る。
血を飲めば何度でも息を吹き返すが、血を摂取せず死に至った場合は血を摂取しても息を吹き返すことは無い。
そして習わしのようなものがあった。
それは、30歳までに子を産むこと。
産めば自らの呪いは消え、子に受け継がれる。
それをひたすら続ける。
ひた隠された一族の呪いを口外させぬために祖先は子どもに、複数の見知らぬ相手と孕むまで、そして孕ませるまで性交させた。
エミリアはそう父親から聞かされ、自分もそうしなければならないと考えたが違った。父親は自らの手でエミリアを孕ませようとしたのだ。
穢れた他人の血を極端に嫌った父親は、血を摂取させる際も自分のものをエミリアに与えていた。
孫に穢れた血が交じることを嫌がった結果、エミリアとの近親相関を選んだ。
その際にエミリアは抵抗し、父親を殺した。
その、血に縛られたエミリアを、エルヴィンは美しいと感じた。この穢れなき少女に血を与え、孕ませるのは自分だ、そう心に誓い、エミリアの父親殺しの罪を隠蔽、屋敷を封鎖、一家は蒸発したようだと報告してエミリアを匿った。