第15章 消失
保育園のお迎えに行って、リヴァイと手を繋いで帰る時。
今日はエルヴィンは学校が休みだったから、私と一緒に来てくれた。
「母さん変わらないな」
「そう?だいぶ老けたよ」
「そうかな。いい女って母さんの事だと思ってる」
「なーに言ってんの。マザコンって、皆に馬鹿にされちゃうよ?」
「ずっと言ってるだろ?母さんは綺麗だよ。綺麗な人に綺麗だって伝えて何も悪い事はないだろ?」
エルヴィンはこういう所がある。親の私でもキュンとしちゃう。勿論、可愛いなって思って。
「なあ」
下の方でリヴァイが呼ぶ。
「抱っこ」
「ん、疲れた?」
「うん」
抱っこすれば、ギュッと首にしがみついてくる。何で我が家の男子達はこんなに甘えん坊なんだろう。男の子はママっ子が多いって聞くけどこんなモンなのかしら。
「母さん、俺母さんを愛してるぞ」
「え!?何処でそんな言葉覚えるの!?園!?」
「俺はずっと知ってる」
「あらあら……マセてるなあ……母は心配だよ……」
そう言って笑うと、リヴァイが顔をぐいっと動かしてきた。小さな唇が重なり、小さな音がチュッと鳴った。
「母さん愛してる」
「やだ、待って可愛い、リヴァイ愛してる!可愛い~!」
「俺は男としてっ!」
「おいおいおい待て待て、リヴァイ!母さん、リヴァイは俺が抱く!疲れただろ!因みに俺も母さんを愛してるからな!来いリヴァイ離れろ」
「へっ!?え、二人してどうしたの?母さん怖い~……」
エルヴィンが無理矢理リヴァイを抱き上げると、グッと上体を逸らしながらエルヴィンの髪をリヴァイが掴む。
「テメェ、邪魔してんじゃねえ。俺の女だぞ」
「いいや、俺のだ」
「“前”はな」
何やら不穏な空気。さっきから何て言葉で喧嘩しているのだろう。リヴァイ……「俺の女」なんて言葉どこで?16も歳が離れた兄弟がケンカなんて……。
「……何?」
「やるか?お前なんか敵じゃねえ」
「今のお前とじゃ一目瞭然だろう」
「関係ねえ、削ぐぞ」
頬を互いに抓りながら睨み合う二人に私は
「んもぉ~!やめなさぁい!」とハートたっぷりめに言った。
可愛いじゃないか。
こんな幸せなことはない。
私は結局二人の言い合いに笑いながら歩き、無事に帰宅した。