第16章 小さな手
ーーそう言えば……。
花奏もイタチと同じ年齢でアカデミーを卒業したと、暗部を入隊した日に聞いた。確か……7歳だと言っていた。
「私の時代はね、早く任務を遂行しなきゃいけない時代だったからね」
と花奏は頷き言う。
「あ、でもさ、イタチ聞いてくれる? カカシは5歳だよ? いくら天才だとか言われてもさ。おかしいよねー?異議あるわー」
「ん?なによ、オレに文句あるわけ?」
カカシがそう言って割って入ってきて、次々とみんながイタチに話しかけた。
暗部という組織は、外から見れば暗いイメージだ。中に入れば、意外や意外。みんな和気あいあいな雰囲気だった。
「よし!次、ナルト!」
「よっしゃーやるってばよ!」
とナルトが勢いよく、ぶん投げた時、地面に濡れた場所があり、思わず足が滑った。
「あわわっ!!」
空を切った手裏剣が、スピードを保ちこちらに向かう。イタチの手には赤子。
「危ない!!」
まさか木の枝に人がいるとは。新人の教師イルカは叫んだ。今から瞬身の術を使っても間に合わない。
「よけてください!!」
叫んだとき、ぴたりと手裏剣はイタチの人差し指と親指の先で、優しく止まる。一切の動揺はなく、焦りもない。
「……兄さん!」
目を輝かせて走ってくるサスケに、イタチは目を向けた。
「すまない。邪魔したな」
とサスケと喋っている間に、音も出さずに投げた手裏剣。サスケは、いつ投げたか分からない。手元がまったく見えなかった。
的を見ていないし、的からは死角だ。木の枝から的に当てる方が難しい場所だ。
カッ。
と小さな音を立てて刺さった。ど真ん中のど真ん中。狂いはない。
「うわ……すげ……」
生徒は言葉を失っていた。暗部の服を着る男がいる。何の用かな? あたりは騒めき始め、イタチはすぐに立ち上がった。
「サスケ、テスト頑張れよ」
「う、うん!兄さん!」
目を細め、サスケに優しい表情を見せたあと、
イタチは花奏を抱え、一瞬で消えた。