第14章 失ったもの
私とカカシはアパートを出た。
なにも喋らずに前を進むカカシ。背中を追いかけて私も続いた。
落ち込んでるのか、考えているのか、後ろ姿だから分からない。
「……ね、ねえ! ダンゾウ様は、どうしてヤナギに話したのだろうね?」
私は疑問を投げた。ダンゾウ様とヤナギの接点が見つからないからだ。
「花奏には言うなって……口止めされてたんだけどね。 アイツずっと根に入らないかって言われてたみたいでさ。 能力も特殊だし、ダンゾウ様から目をつけられていたからね」
カカシは低いトーンで続けた。
「ま、第三者に疑惑を持たれていたのに、それに気づかなかったオレは、いかにだらしなく間抜けか、ってことでしょうね」
そう力なく語った。大きく息を吐いてうなだれた背中。カカシは気落ちした様子で肩を落とす。
「たまたま気づいただけで、カカシが悪いってわけじゃ……っ!!」
私が近づいて言った瞬間、
顔にカカシの背中が当たった。
「っあたたた……もーー、急に止まらないでよー……」
自分の鼻をさすって顔を傾けて、前を見た。ヤナギの実家があった。
「わあ……懐かしい……」
「ああ、そうだな」
ヤナギの家は平屋木造住宅である。大きな庭と大きなビワの木が植えてあり、地面は砂利と石段の道。昔ながらの家は今も変わらない。
「ま、なにも出てこないと思うけどね。 ほら行くよ」
私の背中をポンとたたいたカカシが私に笑いかける。私が黙って突っ立っていたからだろう。
「そうだね。うん、行こっか」