第60章 新・リヴァイ班、始動
「あ?」
「え?」
「…?!」
「今朝トロスト区の兵舎の敷地内でニック司祭が死んでいるのが発見された。証拠を持ってくることはできなかったけど…殺されたんだ…!!」
ハンジは悔しむ感情を押し殺しながらなんとか冷静に、今朝起こった事を皆に話した。
「ウォール教は調査兵団に助力したニックを放っとかないだろうとは思っていた…だから正体を隠して兵舎にいてもらったんだけど…まさか…兵士を使って殺しに来るなんて…私が甘かった…強盗殺人の通報が入っただなんてみえみえの嘘を堂々と盾にして、侵入された…私が甘かったよ…ニックが殺されたのは私に責任がある…」
「ハンジさん……」
中央の憲兵が調査兵団の敷地内に侵入して堂々と殺人を働くなどいったい誰が予想できただろうか。
決してハンジだけの責任ではないが、ハンジは自身の中の正義と見つめ合い、レイス家の事を調査兵団に話すという決断をしたニックに、少なからず“重要参考人”以上の感情を持っていた。
そんなニックが拷問を受けて殺されたなど、自分の責任だと悔やむハンジの姿は、クレアの胸にズキリと刺さった。
「拷問って、憲兵はニック司祭を拷問して…どこまで喋ったか聞こうとしたのですか?」
「だろうな…レイス家とウォール教の繫がりを外部に漏らしてないかってことと…エレンとヒストリアの居場所を聞こうとしたんだろう。」
やはり中央は何かおかしい。
その行動はなりふり構わず常識を逸脱している。
「もちろん今朝の段階からエルヴィン団長、ピクシス司令、全調査兵団に至るまで状況は共有されています。中央憲兵は逆に我々から監視されるハメになってますから…そう下手なマネはできないはずです。とは言っても形を変えてこちらを探る方法はいくらでもあるでしょう…今は何が敵か判らない状況です…今日ここに来る時も二手に分かれたり二重尾行をして来ました。まだここはバレていないと思いますが…」