第11章 遠征
「この神社がどうかしたかい?」
「あぁ、私の育った神社に良く似ていると思ってな」
「主も神社で育ったんだね」
「うむ」
丁度、お婆さんと小さい女の子がお賽銭を投げているのを見付け、自然と笑みが溢れる。
「私のいた神社もな、ああやって、高齢の方や小さな子が参拝に来たものだ」
「微笑ましい光景だね」
「あぁ。その度に…その願いが叶う事を祈るばかりだった」
「うん…そうだね」
目が合ったお婆さんと女の子に共に会釈をし、仲良く手を繋いで帰る様を見送った。
この光景は、時が変わろうと全く同じで、
胸が暖かくなった。
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石切丸殿と境内を散策していると
ふと、微かに妖の気配を感じた。
「…主?」
「っ、すまない」
「何か…感じたんだね?」
「…微かに、だった。これだけ微細であれば害はないと思うが…」
「念のため、お祓いをしておくかい?」
「そうだな」
流石は石切丸殿。
お祓いの所作も完璧だった。
先程感じた気配も一切感じなくなり
胸を撫で下ろす。
でも、何故だろう?
普段なら、妖の気配など詳細に察知出来るのに…
次元を越えているから?
それとも…
私の霊力が弱まっている…??
「主、考え事かい?」
「あっ、いや…」
「何かあるなら相談に乗るよ?」
「…ありがとう石切丸殿。今は大丈夫だ。次の神社へ急ごう」
「…うん、分かった」
私たちもこの神社を後にし、次の神社へと向かった。
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日が暮れて、宿に戻った私達は
一旦1つの部屋に集まり、お互いに本日の調査の報告をした。
みな、事細かに調査をしてくれていて、感心するばかりだった。
その後は共に夕飯を頂き、各自思い思いに過ごし
あっという間に就寝時間となった。
「あるじさま、こんやはゆっくりやすんでくださいね♪」
「あぁ、今剣くんも、石切丸殿もな」
「そうだね、ゆっくり休んで、明日に備えようね主、今剣さん」
「はーい♪」
「うむ。では、おやすみ」
薄暗い照明も消して、真っ暗にする。
程なくして、今剣くんの規則正しい寝息が聞こえて来て安堵した。