第24章 あなたの横顔は
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「……おい、ペトラ!おいって!」
はっ、と気が付くと、オルオが私の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「どうしたんだよ急にボーッとして。もしかして、もらいゲロしそうなのか?」
そう言って小首を傾げるオルオの顔に悪気の色は見えないので、純粋に心配してくれていることが分かる。だけど、素直になれない私は思わず言い返してしまうのだった。
「し、しないわよっ!」
いつの間にかオルオが、ラウラの背中をさすっていた。きっと私が考え事をして、手を止めてしまったせいだ。
「大丈夫?ペトラ…ごめんね変なもの見せて…」
ラウラが申し訳なさそうに謝ってくる。その顔色は、今度は青くなっていた。
ラウラはお酒に強くない。一緒に飲みに行ったことはまだないけれど、話を聞く限りではどうもそうみたいだ。毎回飲んだ次の日はこんな悲惨な状態になっている。
「ううんっ!違うのラウラ!ちょっと考え事してたから…」
オルオと交代して、ラウラの背中をさする。ラウラの抱えているバケツの中には、数時間前までは固形物だったものが液体状になって入っていた。
大抵の人の吐くところなんて、見ていて気持ち悪いだけだ。だけどラウラの場合は、美しい眉を少し寄せて、そろりと静かに吐くから、不思議と嫌悪感はない。
「ラウラ、今度一緒にお酒飲みに行こうよ。強くなる練習しよ」
「うん!…でも、今はお酒の話はやめて~」
私の唐突な思いつきに対して、ラウラは泣きそうな顔で笑ったのだった。