第5章 アクシデントの活かし方(蘭丸BD)/口づけの意味02 〈完〉
~家康side~
蘭丸と葵が退出して軍議が始まり少したったころ
中庭から賑やかな声が聞こえてくる
「はぁはぁ蘭丸君、ちょっと待って…」
「葵様疲れちゃった?休憩しようか?」
「だめ、、甘やかさないで」
「んーじゃ、別の訓練をしよっか?」
「これをこうして、こう!…やってみて?」
「うん」
えいっ!ポトリ
えいっ!ポトリ
「…うぅ蘭丸君、届かないようぅ」
「ごめんね、葵様、ちょっと離れすぎたみたい
はい、どうぞ!」
「うん!」
えいっ!ポトリ
えいっ!ポトリ
「おかしいなぁ何か間違ってる?」
「もう少し近い方がいいかも」
「何もできないね私って…」
「違う違う、女の子なんだから腕の力が弱くて当たり前なんだよ」
「蘭丸君駄目だよ、甘やかさないで?」
「甘やかせてないよ、本当の事なんだから」
あの二人はいったい何をやっているの?
聞いているだけでイラついてくるんだけど…
全然軍議に集中できない!
苛立ちが顔に出ないように、感情を押し込める
「まったく、何をやっているんだ?あやつらは」
しびれを切らした信長様が広間の襖を開けはなつ
的にクナイをあてようとしているが当たらず、
がっくり肩を落としている葵と
その周りをちょこまか動いて
アドバイスをしている蘭丸の姿があった
二人とも信長がそろえた南蛮風の忍びの恰好をしている
葵は「くのいち姿」で、
いつものと違ってヒラヒラと短い丈の着物だ
可愛いけど、
いつもは見えないすらりとした足まで出しているのが気に食わないし、
蘭丸と揃いの着物というのも気に食わない
全くあの人は何のためにこんなもの用意していたのか…
「ほう、なかなか似合っているな」
「信長様の忍は随分可愛らしいですね」
「そうだろう?光秀。あの忍達は俺を飽きさせない。ふむ、いくつか追加で仕立てるとしよう」