第19章 【番外編】マツノトクエスト 第十八章
後ろを振り返ろうとしたがもう遅く、ヨリミチ野郎はここにもヨリミチしていたようで、そのまま足を滑らせ私は湖に落ちてしまった。
泳げない訳ではないけど、湖の中は中々に深く足がつかない。
しかも岸のすぐ上には弱小だけどヨリミチ野郎が待ち構えているし。
対岸まで泳いで岸に上がるしかなさそうだ。
「最悪だ、服濡れたし……これも全部おそ松のせいだぁぁあ」
ここで、自分が馬鹿だった事がある。
お気づきだろうか?
ここの湖にセイレーンが潜んでいる事を。
いや、さっき見てたばっかなのにガイコツに落とされて岸に上がるのに必死で忘れてしまっていた。
「っぶ━━━━━━━━」
【 セイレーン が 現れた 】
「ぶっは……」
湖で泳いでいた私の足首をセイレーンが掴み、もの凄く強い力で中に引き込もうとしている。
ダンジョンでチョロ松にされた時よりヤバイ。
今回は空気の玉みたいのもないし、このままでは引きずり込まれて溺れて死んで棺桶の中に入ってしまう。
あれ? でも私がここにいるのって皆知らないって事は棺桶だけこの辺に置かれて私放置されるんじゃね?
「………っぶぶぶ」
そんな事、考えてる余裕もないのにどんどん下へ下へと潜って行ってしまう。
抵抗して暴れていた事でだんだんと呼吸も苦しくなるし、月の光も遠くなってきているし万事休すとはこの事か……まさにお先真っ暗だぜぇ。
あれ、そういえばこっちの世界で棺桶に入って放置されるとあっちではどうなるんだろ? 身体はリアルな世界に残ったままだけど……
まさか死んじゃうとか?! それはマズイ!!
まだ死にたくないかなー! さすがにぃぃぃ!
こんな事になるならやっぱりお金払っておそ松に呪い解かせてもらった方が良かったのかな━━━━━━━━いや、それはプライドが許さな……
馬鹿な思考は、結局気を失うまで治りはしなかった。