第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「本当は、今年に入ってチーフとかに連れて行かれそうになったんだけど…そんなときに、山口くんのことがあって…」
「ああ…」
あの時、なぜ精神科や心療内科にかからないのかとバッシングが出た。
内科じゃアルコール依存症の診断はできない。
だから、わざと内科しか受診させてないんじゃないかって。
だから事務所周辺へのマスコミの張り込みが激しくなって。
つい最近じゃ、若手のグループから精神科や心療内科にお世話になる症状のやつらも出てきたし…
結局、今に至るまでいけなかったってことだった。
「…それに…もう平気だと思ってたんだ…」
もう大丈夫だって…
もう忘れたって…
そりゃそうだよね。
メンバー以外と仕事してないじゃん。
ほとんどレギュラーの中の個人の仕事しかしてないし。
「…でも、酒飲むとだめみたいだ…」
あの時と同じ状況になると、思い出してしまう…
「…とにかく…こうなったのは、俺のせいで…だから、ごめん…」
トラウマを抱えてしまったのは、自分の軽率な行動からだったと、謝った。
結局、それ以上俺たちはなにも言えなくて…
ツアーが明けてから病院に行こうとか、そういう約束をするしかできなかった。