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第4章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *豊臣秀吉ルート*
てっきり玄関から中へ入ると思っていたが、秀吉はその前を折れ、中庭に向かって歩いて行った。
ハナは不思議に思いながら、その背中に素直に付いていく。
すると、中庭の奥まった場所に建てられた小さな草庵に通された。
「秀吉さん、ここって…」
「茶を淹れてやるって言ったろ?俺の茶室だ」
秀吉は小さな躙り口(にじりぐち)を開け、「どうぞ」と中に誘った。
「お、お邪魔します……」
少し緊張しながら、ハナは頭を低くし、正座で膝を擦るようにして中へと入った。
「―――…わぁっ!」
中の様子を眺め、ハナは感嘆の声を上げる。
三畳ほどのこじんまりとした部屋の中は、掛け軸のある床の間に、囲炉裏、その周りに茶器が並び。
囲炉裏には釜がかけられ、その中からやわらかな湯気が立ち上っていた。
壁の連子窓からはうっすら朝日が差し込み、枯山水の中庭をその隙間から望むことができた。
出来て間もないのだろうか、仄かにイ草の香りも感じられた。
すっきりとして物は少ないが、掛け軸、花瓶、茶器に至るまで、随所にさり気ない秀吉の気遣いが感じられ、どこかほっとさせられる。
「躙り口の作法は問題なし、だな。なかなか見込みがあるぞ、ハナ」
ハナに続いて秀吉が入ってきて、そっと戸を閉める。
「本当?私、茶室に入るの初めてだよ……静かで、なんだか落ち着くね」
「俺もここは気に入ってるんだ、よくここで考え事したりしてぼーっとしてる」
釜の前に座り、居住まいを正すと、そっと床の間の前を指し示す。
「今日は作法なんてこうるさいことは言わないから、ここに座ってゆっくりしてろよ。今、茶を点ててやるから、菓子でもつまんで待ってろ」
そういうと、側に置いていた菓子器に茶菓子をちょんとのせ、ハナの前に差し出した。
それを見て、ハナが”あっ”と嬉しそうに声を漏らした。